5/31/2003更新
「今週のポラ」 vol.17

<形から入る> 

コンサバ・南部(ボクの写真を魚ちゃんはコンサバと言う)は
形から入る・・・と、「ヨク」妻に言われる。

こんなセッティング(たとえばショーの花道を作る)で撮りたい
こんなライティング(たとえばモデルを取り囲むライティング)がいい
このレンズ(たとえば100年記念プラナー)を使ってやろう
この構図(たとえば廊下のパースペクティブの背景)を決めてみる
そんな写真ばっかりだ

 
たとえばこれ、廊下のパースペクティブ

まず、形(ライティングとか構図とか)を決めて、撮りはじめる
気分が盛り上がらない・・・
すこし変えてみる・・・気分が乗ってくる
もっと変えてみる・・・
そこまで「いける」と良いモノが出来る
何処かで「スウィッチ」が入らなければいけない
・・・そのための仕掛けと思えば
「形からはいる」のも、まぁいいっか
これは教訓だ
まず、準備をしっかりする
カメラの種類とレンズを決め、
光の照らし方を決める
背景を決め、被写体のサイズ(画面の中での大きさ)を決める・・・これは形だ
形から入る目的は
その場、その時を、気分と感性にすべてゆだねるために!

魚ちゃんは言った
「魚住vs.南部の『愛ある写真バトル』、百対一で俺が勝つ自信ある。」
それを聞いて
そして、魚ちゃんの写真と情報力を見て
南部は沈んだ
愛のジェネレータ(発電機)=『魚住誠一』にはかなわない!
ボクはバトルするつもりなかったんだけど・・・ネ
多分、ボクの撮る写真には「愛」ではなくて「情」がない

先週と一昨日の夜
あるモデル事務所の新人さんの
カメラ・ポージング・レッスンというのをやった。
ボク自身のエクササイズでもある
カメラの前にいる人を「愛する」レッスン?
存在感を感じ、リスペクトするレッスン?
一昨日は、ストロボでハイスピードの連写
気持ちよく撮った。
彼女たちにストロボ・シャワーの気持ちよさ、体験してもらいたかった。
いい表情、出していた。
ボクが彼女たちに向かって言うコトは・・・
「それはポーズでしょ?、ポーズはいらないヨ。」
「立ってるだけであなたを表現できる存在感を見せて欲しい。」
こうも言う・・・
「スタジオでカメラの前に立って何か"ポーズ"をするんじゃない。」
「あなたの日常生活のちょっとした仕草を、ホリゾント(背景)の上で見せて欲しい。」
「ほとんどのカメラマンはそう思っているはずだ。」

説明すると・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ボクを含めて多くのカメラマンは
スタジオのホリゾント(背景)の上で人工的に作られた光に照らされた、
モデルという女の子達に
50年代のピンナップガールのように、腰をくねらせ
愛想笑いをして貰いたいと思っているわけではない
本当なら、本物のかわいい娘がいるその場所で
その娘が美味しそうに飲み物を飲んでいる姿
流行の洋服に身を包み、楽しそうに友達と話しているその姿
そのまま、ありのままをスナップ出来たらそれに越したことはない
そして、その娘には
クライアント(発注主)の店で売ってる服を着て貰いたい
あるいはクライアントの作っている飲み物を
美味しそうに飲んで貰いたい
「それ」が出来ないから、その状況を探すのが面倒だから
モデルという、そこそこ綺麗で聞き分けのいい娘達のカタログから
「ひとり」を選び
暗くもなく、背景は好きな色にすることが出来るスタジオへ
来てもらって、写真を撮るわけだ(もちろん有料で)
ロケというのもあるし、スナップということも出来ないではない
簡単に効率的に、あてどなく美少女を探す手間もかけず
肖像権を必要に応じて、切り売りしてくれる仕事
・・・それがモデルだ
おまけに普通は笑顔が売り物!
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この季節、ちょうど自分の誕生日を過ぎたあたりから
毎年のように、ボクは
心のラビリンス(迷宮)にはいる傾向にある
好んでそうしてるつもりはないけれど
十二月下旬からの冬は、寒くて、暗くて、嫌いだ
クリスマスも、お正月も、嫌いだ
仕事はないし、誰も遊んでくれないから、嫌いだ


さて、その店は
名古屋市名東区、小池町の交差点を南へ20メートル、道に面して東側
Paloma(052-775-3100)という、地味で洒落たカフェ
少し前まで、ヨーロッパの古着屋さんがあった場所と言えば
知ってる方も多いかもしれない。
ボクのスタジオからは
歩いて5〜6分と言うところか
さっき、シェフ御自慢のカレーを食べてきた
オーナーでシェフもやっている彼は長身のいい男。
さもありなん、
彼は現役(男性モデルは一般的に暇?)のモデルだった
cafe Tiffinのカードに、
色を付けてくれた長屋のアーティストの友達でもある
ボクが将来を期待している、ある若いフォトグラファーの友達でもある
その店のインテリアは長屋のアーティストに言わせると
「友達の家のリビングにいるような雰囲気」と
言っていた。
「古道具屋で、良いモノを見つけるのがとても上手い友達の、リビング」と
言い代えるべきだ
椅子も机もみんな60-70-80年代の、
多分、お洒落だったモノが使われている
時間が止まっている・・・良くあるアンティークカフェのように、ではない
studio-Voiceを読むのが良くあう(似合うのではない)カフェ
ブルータスのCASAも置いてあることは
普通なんだが
CASAの内容と、その場が
とても気持ちよくフィットする。
けして、お金はかかっていない
現にボクは電気ドリルを貸した
つまり、彼が手作りで店を作ったということだ
今度は、
冬の、低い日差しが差す時間に行ってみよう

下世話な発想をすれば
なんだかシリアスなスナップも、撮れそうな店だし
今風のファッション写真も、撮れそうな所なのだ
70年代モノの
お母さんのスーツケースを持ってくるモデルがいる
その子を、ここで撮ったら似合うかもしれない!
「そんなことばかり考えているから、『情』のある写真撮れないんだよ!」と
天の声が聞こえてきそうだ。

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