7/27/2008更新
「今週のポジ」 vol.15
 長屋の存在感


その長屋の一階、喫茶店の脇を通り抜けて共同住宅へ通じる路地には
いつのものだか、自転車の轍と足跡が刻まれている。
長屋に住まう
ああ、朝7時15分・・・目を醒ますと
四階の住人が水を流す音がする。
今朝から、ソウルへ旅行に出るはずなのに
「あれっ?」っと思う。
4メートルほど上空に住むその人の携帯に電話する
「出発は午後」だそうだ。
「朝5時に出発する」と言っていたのは
インドに向かって「一昨日」旅立った、二階に住む仙人夫妻だった。
何故、朝の水の音が
三階からではなく、四階だとボクにわかるのか?
三階は、中古自動車部品を母国に輸出する仕事をしている
スリランカ人の古い友達が借りていたけれど
何故か日本に入国できなくなり、もう二年ほど空き家状態になっている。
その部屋に残っている荷物を処分する承諾を得て
先日はこれまた外国人
本郷にある美味しいスペイン料理店の
オーナーシェフ・ペドロさんが
スペインから輸入したオリーブオイルの倉庫として
借りる話も持ち上がっていた
(小ぶりな食品輸入代理店を計画しているらしい)
しかし、三階まで重いオリーブオイルの缶を上げ下ろしするのは
少々、大変と
やっぱり、空き家のままになっている。
結局、団塊の世代に属する
今や、独りで、悠々自適と言ってもいい
腕のいいグラフィックデザイナーが
近い内、隠れ家兼倉庫として借りることになっていた・・・ついさっきまでは
・・・そのヒトから電話があり
スリランカ人の残した荷物を処分するのにお金がかかりすぎる
という理由で
その部屋を使うことを諦める・・・とのこと。
いずれにしても、今は空き家だ。

なんだか、長屋だ。

夏になると、壁いっぱいに蔦の絡まる
この 四階建の長屋には
五世帯、七人の住人が住んでいる。
ボクもその中の一人
この春から、臨時の住人になっている
何を隠そう、大家でもある。
一階には喫茶店
ぜんぜんイケテないその店のオーナーは
もうすぐ近所に開店する「コメダ」珈琲店に恐れをなして
家賃の値下げを頼みにきた。
二階には、ボクの住むロフトとも倉庫ともつかぬ部屋が一つ。
その隣の部屋には、そう、まさに仙人という風貌の
インド系瞑想人間が所帯を持っている。
一年のうち、寒い季節の何ヶ月間か、
彼らはインドで瞑想とビジネスをする。
三階には、ヘアメーク見習の若いお兄ーちゃん。
四階には、今をときめく放送業界人(とってもマイナーなFM局)の
夫妻予定者達
四階のもう一部屋には
元スタイリスト、アーティスティックな世界放浪人が住んでいる。
その人が、今日から、ソウルへ旅に出たというわけである。
とはいっても、その旅は四泊五日
週四日の労働の疲れを
アジアの喧噪で癒そうという程度の小旅行。
この夏、その人と「このアパートの看板を作ろう」と盛り上がり
その名前、あらためて考えた
その時のキーワードが
「長屋」だった。

三階の空いてるお部屋、借りたいヒトがいらっしゃったらご連絡下さい
ご相談に乗ります・・・・・・大家
追伸、もう入ってしまいました、2003年五月
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